説明 「私のことはサルと呼んでくれ」

サルマン・ビン・ナセル・アル・サウドはサウジアラビアの王子だ。 彼は24才にして、この惑星で最大級の資産の相続人となっている。

サルの自慢の種は自らのペントハウス。自身と部下とで探し出した中では最も高価なペントハウスだった。繁華街の中心に位置しており、360度どこを見渡しても息をのむような風景が広がり、街中の建物の輪郭と港とを一望できる。そこでは知られている限り一番贅沢な類のパーティが催されている。

だいたいの点で、今宵もサルの家における他の夜と変わりない。世界でもっとも大金持ち、有名、有能、冷酷、賢い、カリスマある人々（それに加えて彼らを食い物にする連中）が、サルのペントハウスにすし詰めになり、どたばたと音を立てる。

そして、午前零時きっかりに、サルがここに姿を見せる。酔っ払い、無頓着極まりなく、金切り声を上げる未成年の少女の一団を背後に引き連れながら。

しかし、これがこのペントハウスでサルが主宰する最後のパーティになるとは、彼には知るよしもなかった。今宵を過ぎれば、すべては変わるのだ。どんな形にせよ。