説明 1932年11月、大西洋の沖合にて

サウサンプトンからニューヨークへ向けて船出し⼀週間が過ぎた。モーニングスター社の新造船、42000トンを誇るリヴァイアサン号は、この寒い海を29ノットで進んでいる。この豪奢な船の処⼥航海で、船⻑は栄光のブルーリボン賞――⼤⻄洋最速横断記録を出した船に与えられるその賞を取るようにと指⽰された。

甲板では、ダブルのウールのコートを着込んで塩⾟いドライなカクテルを嗜める。友⼈たちは賑やかに⾔葉を交わし、楽しい時間を過ごすだろう――船の機関室からはプロペラの⾳が⽿障りに響いてはいるけれども。船⾸からの⽔しぶきが頬へかかり、あなたは笑顔で、⾆のうえにカクテルの中のダイスドオニオンを転がす。あなたの眼差しは、まったくもって奇跡のようにおだやかな波間へと向けられている。――これは、新しい始まりだろうか? それとも何か違うものだろうか? あなたの夢は⼿の届くところにあるのだろうか? 何が上⼿くいかないのだろうか?