説明 メキシコを出たマルコスは、カリフォルニア南部の農場ではたらきはじめた。しかし今や米国最大の麻薬密売組織のひとつを取り仕切っている。マルコスが富と権力をかき集めているのは、貧乏だった自分のような暮らしを家族にさせたくないからだ。

そして今夜こそその願いが成就するときだ。愛娘のアリアナ・ロハス・ファハルドが、十五歳の誕生日を迎え、成人の“キンセアニェーラ”(十五歳祝い)を祝う集まりが開かれるのだ。マルコスは金に糸目をつけなかった。まちがいなく、カリフォルニアで見たこともないような“キンセアニェーラ”になることだろう! この日の成功のためならば、マルコスは殺人だろうといとわない。そして、殺さなければならない連中にはことかかない。不平を言う親族、無能な部下、潜入しているサツ、対立組織の工作員、そいつらが会場にいても少しもおかしくはない。

もし、そいつらがマルコスの娘の一世一代の夜をめちゃくちゃにできると思っているなら、それは大きな、大きなまちがいだ。