説明 ぼくたちのクラス、6年1組には、外国からやってきた転校生がいる。でも、その子がしゃべっているところはほとんど見たことがない。先生になんで?って聞いたら、こっちの言葉がまだ上手につかえないからなんじゃないかって教えてくれた。あの子も本当は喋りたいのに、うまくできないのかもしれないんだって。
だからぼくたちはその子に話しかけた。毎日話しかけた。その子は嬉しそうにしてくれていたけど、たまにその子が何か言いかけてあきらめる時があるのをぼくたちは知ってる。そういうとき、その子はなんとなくさみしそうな顔をしている気がする。

だからぼくたちはとっておきの秘策を編み出したんだ。その子はお絵かきがとっても好きだから、言葉で伝えられない分、絵を描いて貰えばいいんじゃないかって!

そうしてぼくたちは毎日その子といっしょにお絵かきをして、絵や記号に意味をたくさん持たせた。暗号はどんどん増えていって、ついにはひとつの言葉みたいになっていった。ぼくたちにしか伝わらない、秘密の言葉。指差しやお絵かきでなら、僕たちは会話できるんだ。

だけど、この言葉がもしばれて、大勢に囲まれたらきっとあの子は怖がっちゃう。だからクラスのみんなには内緒。これはぜったい、ぼくたちだけの秘密にしておかなくちゃ!