説明 昔々あるところに、天に届くほど高い、
黝(あおぐろ)い玄武岩で拵えられた塔がありました。 
その最も上の玄室に葬られている方は、
最も尊き聖人だとも、餓えたる禍つ神とも噂されていました。
塔の中の宝物を奪うため、また棺の中に眠る方の力を簒奪するため、
多くの者が塔に挑み、諸々の罠や魔物の手によって命を散らせました。

けれど、どんな守護者よりも強い者たちがいました。
塔を登りきった先の広間に眠る骨の虜囚たちこそが、
群を抜いて強壮であったのです。
彼らがひとたび外へ出れば、必ずや世界にその爪痕を残したでしょう。
けれど彼らが知る世界は、大きな大きな石の針の先端の中空と、
その硝子窓から見える広大な地平のみでした。

玄武岩の柱がとうに崩れ去った今、
彼らの終わりが「いつまでも幸せに暮らしました」であることを、
私たちは願ってやみません。