『えんりょう(仮題)』について

プレイの概要

『えんりょう(仮題)』は協力のゲームです。ゲームの参加者であるプレイヤーは、みんなで協力し合って1つの物語を作り上げていきます。プレイヤーが演じるキャラクターたち高校生は、科学を信じるかオカルトを信じるか、もしくは学校生活のことなどで対立するかもしれません。しかしプレイヤーは違います。時にキャラクターたちの友情の物語を、時にキャラクターたちの対立の物語を、プレイヤーは一緒になって紡いでいくことになります。プレイヤー全員がゲームマスターとしての役割を担います。プレイヤーは物語に介入する権限を平等に持ち、紡がれた物語に対して責任を平等に負うのです。は

『えんりょう(仮題)』では、シナリオに相当するものを〔調査対象〕と呼びます。〔調査対象〕には様々な要素が用意されていて、セッション中、トランプの札を引くことでどこで何が起きるのかが決定されます。誰と出会い、どういった手がかりを手に入れるのかも、トランプの札を引くことで決定されます。今回はどの〔調査対象〕で遊ぶのかを選ぶところからゲームは始まります。

〔調査対象〕の選択の他に、キャラクターの作成が必要です。6種類のプレイブックから他のプレイヤーとは同じにならないように1つ選んでください。そしてプレイブックに書かれている指示に従えば、キャラクターは完成。もちろん、他のプレイヤーたちが同意するなら、以前に使ったキャラクターを使ってもいいでしょう。その際も、プレイブックができる限り被らないようにしてください。〔調査対象〕を選ぶ前にキャラクターを作成しても構いません。これでセッションが始まります。

セッションは【導入】、【調査】、【解決/執筆】といった3つのフェイズから構成されています。

【導入】は、〔調査対象〕の冒頭に書かれた情報を読み上げ、今、どこにいるのかを決定し、現在の状況を把握するためにあります。ここでは〔手がかり〕の捜索は行われません。現状に納得し新しい〔場所〕に移動することになったら【導入】は終了です。【調査】に移ります。

【調査】が、ゲームのメインパートでいくつもの〔場面〕から成り立っています。〔場所〕を移るごとに〔場面〕が切り替わります。そうして様々な〔場所〕で、謎を解き明かすための〔手がかり〕を集めてください。充分な〔手がかり〕を集めたと判断したら【調査】は終了です。【解決/執筆】に移ります。

【解決/執筆】で、集めた〔手がかり〕をもとにプレイヤーは自由に話し合ってください。筋道がたったのであれば、最後にそれが正しい答えかどうか判定を行います。判定に成功すれば、その推理が正しい答えとなります。失敗であれば、〔手がかり〕を列挙だけして、最後に「ですが謎の答えはわかりませんでした。お役に立ちましたか?」と結んだような発表を行うことになります。

そう、正しい答えはどこにも用意されていません。判定に成功さえすれば、話し合って決めた答えこそが正しい答えとなります。そうして物語は幕を閉じます。

専任ゲームマスターの不在

よくあるロールプレイング・ゲームで言うところのゲームマスターは、『えんりょう(仮題)』にはいません。正しくは専任のゲームマスターはいません。ゲームマスターの役割、権利、責任は、プレイヤー全員で共有され、持ち回りで行われて、そしてみんなが等しく発言権を持ちます。プレイヤーの誰もが等しく物語に介入できるのです。場面設定を決めるのも、判定結果を決めるのも、ノンプレイヤー・キャラクターを演じるのも、手に入れたものの詳細を決めるのも、すべてプレイヤーが行います。

こうしたゲームはえてして参加者それぞれの発想の上に成り立っています。すでに発言されている誰かの発想をもとにして、新しい話を思いつく参加者もいることでしょう。できることなら、進んでそのように他のプレイヤーの発想を土台にした発想をしてみてください。また自分の発想にこだわりすぎるのではなく、他の参加者が自分の発想をどういう風に転がしふくらませるのかを楽しみましょう。自分1人の物語ではなく、みんなで作る物語なのですから。そのためにも通常の会話と同じで、他の参加者の発言に耳を傾けることが重要です。別段、他の参加者を感心させるような発想をする必要もありません。他の人が創造しづらい難解で複雑な発想よりは、たとえ自分では陳腐だと思えても単純で簡潔な発想の方が、思いもしなかった発想を他の参加者に閃かせるものです。

ただ同時に、悪意がなくても他の参加者がまったく望まない、もしくは心から拒否したい方向に話を展開できてしまうのも事実です。そのためにも事前にあらかじめ話し合っておくことは意味があります。ゲームやセッションよりも、一緒にゲームを遊んでいる参加者を大事にしてください。

〔班長〕

専任のゲームマスターはいませんが、誰か1人が、できればゲームに詳しい参加者がゲームの案内役となった方がゲームは円滑にすすみます。このゲームでは、その案内役のことを〔班長〕と呼びます。プレイの流れを把握してみんなの進行を手伝ったり、タイムキーパーとして冗長になりすぎている〔場面〕を適度に終わらせたり、可能ならこのゲームに手間取っている参加者に声をかけてみたり、こういったことが〔班長〕の仕事になります。ですが、これらは他の参加者が気にかけていても問題ないことです。

そして、もしゲーム中にルール運用などで議論が長々と続くような時には、〔班長〕がそのセッション内での一時的な裁定を下して物語を先に進めましょう。そしてその一時的な裁定を物語内でむやみに変更しないようにしましょう。この1点を除いては、〔班長〕にゲーム上、何か特別な権限があるわけではありません。

プレイの前に

ゲームに期待している雰囲気と、実際のプレイの展開がまったく異なっていて、肩透かしを食らうこともありえるでしょう。

もっと踏み込んで言うと、『えんりょう(仮題)』は高校生を主人公にしているゲームでるため、もしかしたらプレイ中に、いじめ、校内暴力、体罰、性交といったことが話題に上がるかもしれません。他にも人にショックを与える物事はあるでしょうし、それも話題に上がりうるでしょう。そうしたことがプレイ中に発生しても、参加者全員が受け入れられる場合は確かにありえます。しかし同時に、そうしたことに触れたり、細かく掘り下げることに抵抗を感じる人が参加していることもありえるのです。

こうしたことがもとで起きる問題を防ぐためには、プレイ前に話し合っておくことをお勧めします。

トーン

不思議な事象が起きて、その謎を解くホラーやミステリーは無数にあります。当然、そのすべてが同じトーンだという訳ではありません。コメディもあればシリアスもあります。バイオレンスなものやドタバタギャグだって、何なら成人向けだってあるでしょう。これらをあらかじめプレイ前に決めておくことで、物語の展開の方向性を定めることができます。ただ定めたからと言って、何も「かならずすべてそういう展開であるべきだ」と厳密に守らなければならないわけではありません。シリアスな作品の中にクスリと笑えるシーンがあったりするでしょう。ドタバタギャグの中にお色気シーンがあったりするでしょう。度を過ぎて脱線しなければ、ある程度は許容した方が物語に広がりが生まれます。

レーティング

全般的な規制としては映画やゲームのレーティングを参考にできます。映画ならG、PG12、R15+、R18+というもので、Wikipedia記事:映画のレイティングシステムを参考した一覧を以下に記します。

  • G:全年齢対象。軽度の暴力や犯罪は容認されます。
  • PG12:12歳未満(小学生以下)の鑑賞には、成人保護者の助言や指導が適当。小学生が真似をするおそれの高い物事が対象。
  • R15+:15歳未満禁止。PG12より刺激が強いもの。
  • R18+:18歳未満禁止。著しく性的感情を刺激するものや、著しく反社会的な行動や行為を賛美するもの。

「一線と幕/Lines and Veils」、その他のセーフティ・ツール

さらに踏み込んで個別の事象について取り決めを作っておきたいのであれば、「一線と幕」を推奨します(Ron Edwards『Sex and Sorcery』より)。これはある物事の扱い方を、あらかじめ参加者同士で共有しあっておく方法です。ある物事については、触れたくない、一瞬でもプレイ中に見たくないのであれば、それとプレイの間に一線を引き、一切の登場を禁止しましょう。そこまでではなく、その物事が発生するのは許容できるものの、直接的な表現を避けるのであれば、それを幕で覆ってしまって、直接触れないようにしてしまいましょう。

ただ、1つ1つの物事について、「これはどうだ?」「あれはどうだ?」とみんなで議論する必要はありません。〔班長〕がいるなら、〔班長〕が例として、スプラッター、いじめ、自殺、校内暴力、体罰、薬物(喫煙/飲酒含む)、性交、性暴力などをあげ、それに答えて「いじめの話題は禁止にしたい(一線)」とか、「体罰は直接表現を禁止で(幕)」とかあげれば充分です。その際に、嫌な理由を言う必要はありません。

また、その他にもプレイを円滑にすすめるためのセーフティ・ツールは色々とあります。使い慣れているものがあれば、それを使っても当然問題ありません。

用語集

〔調査対象〕 〔プレイブック〕 〔場所〕 〔現象〕 〔手がかり〕 〔脇役〕 〔状態〕 〔ムーヴ〕 〔一般ムーヴ〕 〔専門ムーヴ〕 〔判定〕 〔有利判定〕 〔不利判定〕 〔秘密〕 〔人間関係〕 〔友人〕 〔ライバル〕 〔〕 〔〕 〔〕 〔〕 〔〕 〔〕