大前提のハックについて

『ほうかご探報』は『Paranormal Inc.』のハックなのですが、そもそもこのハックというものは何ぞや、と乱暴に言いますと、公開された他システムを活用して自作を作る、というものです。日本語で読めるもので有名なところだと、ホビー・ジャパン社からでている『指輪物語TRPG 5E』とか『クトゥルフの呼び声TRPG』とかは、フィフスエディションRPGのハックとなるんでしょうか?

で、海外(のインディーズ界隈)で有名なゲームに2010年に出版された『Apocalypse World』があります。

  • キャラクター・シートを各キャラクター・タイプごとに分け、そのタイプで遊ぶ上で最低限必要な情報を掲載した(タイプごとの)プレイブック
  • プレイヤーとマスターが選択できる行動はすべてmoveと呼称して管理
  • キャラクタータイプ専用のmoveも存在
  • moveは必ずしも判定を必要するものではない。また自分だけでなく、他者のキャラクターに影響するものもある
  • 判定は2d6で、10以上で成功、7-9で条件付き成功、6以下でマスターがマスター用moveのいずれかを実行
  • マスターはダイスを振らず、演出に特化

などの特徴がありますが、一番大きなものは「このシステムを流用して好きにゲームを作成しても構わない。報告も不要」とした点です。これによって多くの、本当に多くのフォロワーが生まれました。

その1つが2019年に出版された『Brindlewood Bay』です。このゲームはミステリ小説好きのおばあちゃんになって、様々な謎を解く、というものですが、シナリオで提供されているのは「どういう謎が起きたのか」「調査をするとどういう手がかりが発見されるのか」ということで、正しい回答は提供されていません。で、集めた手がかりを元にして自由に謎を解き、解明判定に成功すればその推理が答えであった、となるのが一番大きな特徴となります。

大雑把な言い方ですが、この仕組みを使い、『The Quiet Year』発のトランプを引くことでランダム生成されるプロンプトを組み込んで、『Paranormal Inc.』というゴーストバスターズRPGが2021年に発売されました。あわせて作者は、そもそもの流れと同じ方向性をもってSystem Reference Documentを公開し、作者に連絡を入れる必要なく、同エンジンを使ってゲームを作成できるようにしました。

このお陰で『ほうかご探報』ができたのです。

 

発端

そもそもはメモを見るに、2023年11月20日に「あれ、『Brindlewood Bay』系の七不思議RPGはすごくありなんじゃないの?」と思いついたようで、その時点で『ゆうやけトリップ』っぽくいってもいいと判断しています。『ゆうやけトリップ』(芳文社)の2巻が発売されたのが2023年9月1日と、ふた月ちょっと前なので、その影響はありそうです。

11月28日には、そこから考えをすすめて、以下のメモが残っていました。

  • 『Paranormal Inc.』(Brindlewood Bay系)で行く
  • PCは中学生の、七不思議物。高校生だと行動の幅が広がりすぎるから却下
  • 目的は、不思議の謎を解いて文化祭や壁新聞で発表すること
  • 「解く」は、怪異は無いと解体するか、怪異の理由を見つけ出すかは自由
  • 夕方に1アクションだけ取れ、締め切りまでに解決という縛りで、アクション数を制限する
  • プレイブックは文系、理系、体育会系、不良。不思議の子
  • 不良は、授業をサボることで1日2アクション可能(サボると悪名ステータス付与)
  • 不思議の子は、夕方以降みんなに認知される幽霊的存在だが、夜に行動できて1日2アクション可能
  • 不思議の子の夕方交渉は、自動的に不利判定
  • 締め切りは12月8日。テストプレイもレイアウトもなしに印刷して、12月10日開催のゲームマーケット2023秋で無料配布

そして12月7日(木)時点で、以下のように、ほぼほぼ現行の型にまとまっていた模様です。

  • プレイブックを勉強家の子、理系部の子、文系部の子、帰宅部の子、運動部の子、不思議の子
  • ムーヴに、シーンを追加する《夜遊び》を追加。ピンゾロで補導が発生。不思議の子は補導されない。
  • 親友一人とライバル一人による判定サポート

以下は12月7日時点の原稿。

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……そしてこの後、お酒を呑みに行っているので、おそらくはある程度(自分の中で)目鼻がついたのだと思われます。

この2日後、12月9日(土)夜に家の近所のアクセアに行って20部刷ったことは覚えています。なぜ夜かと言うと、結局、日中は原稿を書いたりしていたからです。そして無事、12月10日(日)にゲームマーケット2023秋で『七不思議(仮題)』として配布したのでした。

about HT_02.jpeg

 

プロジェクト始動

2024年になり、ちょろちょろと考えを進め始めました。どれも実現には至らずに、基本的な構成は『七不思議(仮)』を踏襲する形に最終的にはなったのですが、考えていたものとしては以下のようなものがあります。

  • 【場所】をトランプのハートで決定するのは捨てて、学校の見取り図と町の地図を用意する(【取材対象】で使い分ける)。そこに様々な【場所】をプロットする(『超☆少年時代』の地図)。今回使用する場所、使用しない場所は出るが移動は自由に行えるようにする
  • 【場所】をトランプのハートで決定するのは捨てて、白紙の紙を1枚用意。選択した【取材対象】にありそうな場所を参加者全員でプロットし、地図を完成させてから遊ぶ(『アーキペラゴ』の世界構築)。移動は自由に行えるようにする
  • プレイブックに芸術部を追加して7つにする(ちょっとだけ7にはこだわっていました。私の好きな架空世界でも、世界を変革するのはえてして7人組だったりするからです)

こういったことを1月2月あたりに思ったり、考えたり、やっぱないか―と捨てたりして、3月30日に初めて『七不思議(仮)』のテストプレイを行いました。

で、4月5日には何を書くのかを明らかにするためにページ構成をTwitterに投稿しています。それを見るに、選択ルールとしてプレイセット〔先生〕があります。またこの時点で既にサンプルタウンの作成と、【取材対象】(この時点では【調査対象】ですが)を7つ掲載することは決めていた模様です。そして「年内に形にできればいいのですが……」と言っていますが、無理でしたね。

https://x.com/_HarrowHill/status/1776221510514114971

  • 七不思議(仮題)
    • クレジット
    • はじめに
      • 遊ぶために必要なもの
    • ゲームの概要
      • GMレス
      • 案内役
      • トーン
    • キャラクター作成
      • キャラクター・シートの内容
        • 【秘密】
      • 名前
      • 【プレイブック】
        • 【運動部の子】
        • 【文系部の子】
        • 【理系部の子】
        • 【勉強家の子】
        • 【帰宅部の子】
        • 【不思議の子】
    • ルールと運用
      • セッションの構成
        • スート
        • 準備
        • 導入フェイズ
        • 調査フェイズ
        • 解決フェイズ
      • 〔ムーヴ〕
        • 〔一般ムーブ〕
      • 判定
    • 〔調査対象〕の内容
      • 自作
    • 選択ルール
      • 【先生】
    • 舞台例示
      • 名所
        • 中学校
      • 住人
    • 【調査対象】
      • 7つ