昔々あるところに、天に届くほど高い、
黝(あおぐろ)い玄武岩で拵えられた塔がありました。
その最も上の玄室に葬られている方は、
最も尊き聖人だとも、餓えたる禍つ神とも噂されていました。
塔の中の宝物を奪うため、また棺の中に眠る方の力を簒奪するため、
多くの者が塔に挑み、諸々の罠や魔物の手によって命を散らせました。
けれど、どんな守護者よりも強い者たちがいました。
塔を登りきった先の広間に眠る骨の虜囚たちこそが、
群を抜いて強壮であったのです。
彼らがひとたび外へ出れば、必ずや世界にその爪痕を残したでしょう。
けれど彼らが知る世界は、大きな大きな石の針の先端の中空と、
その硝子窓から見える広大な地平のみでした。
玄武岩の柱がとうに崩れ去った今、
彼らの終わりが「いつまでも幸せに暮らしました」であることを、
私たちは願ってやみません。
この街には、古くから悪い噂があった。
なんでもこの街は、悪霊たちの住まう石の館の上に築かれたとか。
この街の地下、それほど奥深くはない所に、そこはある。
ひとたびそこに入れば、打ち捨てられた数多の骨が起き上がり、
入ってきた者を死ぬまで打ち据えるという。
彼らは何を守っているのだろう?
彼らはどうして、そんなちっぽけな場所に固執しているのだろう?
彼らの長を知る者は、もう誰もいないのに。
街はもう、その部屋の中の宝物を必要としないほど富んでいるのに。
彼らがいようがいまいが、この地に住まう人々の日々は変わらないのに。
それでも、彼らはいるのだ。
地の底に、いるのだ。
がらんどうの眼窩で、あなたがたをじっと見据えている。