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私たちはきょうだい。双子、あるいは三つ子。 家族という狭い共同体の中で、同じ日付に生まれ、血の繋がった、さらに狭い関係。 誰よりも近しい存在と言える私たちは互いに影響を受け合い続けることになります。良いか悪いかはともかく。
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【奇品(きひん)】=すぐれたもの。 (出典:平凡社「普及版 字通」)  ようこそいらっしゃいました。当サロンは、世間にはいささか理解されがたいご趣味をお持ちの紳士たちが、自慢の逸品を持ち寄り披露する、大人の社交場です。  その性質故、会員の方からの紹介でないと入場できないことになっておりまして……なんと、あの方からのご紹介でしたか。あの方がお認めになったのであれば、相当の品をお持ちでいらしたのですね。後で拝見できるのが楽しみです。  それでは、品評会が始まるまで、こちらでしばしご歓談を……。
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先生は、異郷からやってきた。 はじめはこの土地の言葉を話せず苦労したらしいが、今では同じ言葉を話している。 ある日、先生の故郷の言葉を聞いた。聞いた事のない音の響きに見たこともない世界を垣間見た。言葉は世界だった。 遠い遠い場所の、誰も知ろうとしなかった異郷の言葉を、私だけが先生に尋ねた。そうしてお互いを知り、会話をするうちに新しい言葉が生まれた。 この言葉が、先生と私のつながりに思えて、たった2人の大切な言葉にしたいと思った。
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とにかく私たちには時間がない。 それは仕事、ゲーム、戦闘、どのようなものでも良い。 時間がないから、普通の言葉遣いなんて冗長なものを使ってられない。 省略だ。短縮だ。略語だ。
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【失われし祝詞】 かけまくもかしこき××××のおほまえに×××× かしこみかしこみもまをさく …… このちを しずみやの とこみ しずまります ××××の たかく たうたき ごしんとくを あおぎ たてまつりて …… けふの いくひの たるひに  き ひろき みたまの ふゆを かがふり たてまつりて ひととせ ひとたびの ××つかまつると …… たひらけ   すらけく きこしめし おほまえに ×××××××××× …… をも めぐし うむがむしと みそなはして …     ×の われらが よの てながのみよの いかしみよと いはひ たてまつり さきはへたてまつり たまひ 我々は、人間から忘れられた存在である。または人間から「ない」ものとされた存在だ。 だから決めたのだ! 人間どものいない、我々だけの楽園をつくろうと。 新たなるカミを祀り――楽園は、今ここに開かれる。
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【日陰者の小唄、或いは楽園への秘鍵】 ひとつひそかなひかげもの ふたつふかしぎふりさけみ みっつみぎわとみまごうて よっつよすがらよばはれて いつついつからいむまれし むっつむかしはむこなるか ななつなまへはなきものに やっつやさかにやすかれと ここのつこころことばなり 私たちは、人間から忘れられたか、この科学世紀を経て人間から「存在しない」とされたものたちです。そのため、この世界で私たちは、どうしようもなく“異物”でした。 しかし、それでも続く明日のために生きていかなければなりません。ですので、私たちは人間たちには見つからないよう自分自身を秘め隠し、お互いに協力することにしたのです――人間社会の只中で私たちが作り上げたこの楽園が、いつまでも続きますようにと祈りながら。
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賑わう帝都の片隅に、その店はあった。隠れ家のような佇まいに、雰囲気の良い内装、そして掲げられた看板には「当店では人間とそれ以外のお客様を区別致しません」と書かれている。私はこの店の主人であり、君たちは一風変わった常連客だ。 当店の名物メニューに、自家製のハーブティー、誰かが持ってきてくれた美酒も添えて。今日もひっそりと営業中。また、からんと鈴の音が店内に響く。いらっしゃいませ。
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我らはこの山の長である。我らには熊のような体躯も、鷲のような翼もない。決して強い生き物とは呼べないだろう。しかし我らがたった十数匹でこの山のケモノたちの上に立っているのは、よくはたらく知恵と変化の術のおかげである。おかげで山のふもとの人里に下りることだってできる。 それにしても近頃のニンゲンの里はなにやら不思議なものにあふれている。道には明かりのつく木が生えているし、家では音の鳴る箱に耳をかたむけている。とはいえ暮らしが大きく変わったわけではないようだ。我らの暮らしもそう変わることはないだろう。
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人々は好奇心を満たすために、あるいは必要に駆られて未知を追い求める。 我々の誰もが学者であり、専門家であり、そして好奇に飢えた人間だった。我々は一つの大いなる目的にために結束し、未知を明らかにするために日夜研究を続けていた。我々の中には嬉々としてその生活を享受している者も居たし、重圧に押し潰される者も居た。 我々の研究は着実に進んでいったが、その成果は秘匿された。少なくとも、その実が完全に熟すまでは。そしてついに、研究は禁忌と呼ばれる領域に達した。しかし、それをすぐさま指摘する者は我々の中には居なかった。気付かなかったからではない。己の好奇心と、その好奇の対象を自ら葬り去ることを、天秤にかけていたからだ。
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ここは楽しい愉快なお化け屋敷。もう誰も住まなくなった村の、一番大きく立派だった屋敷に、約50人ほどで暮らしている。 お化けだったって毎日どんちゃん騒ぎ! ここは居心地が良く、暗くて、臭くて、とっても寒くて、震えるほど楽しい場所だ! 人間が近寄らないこの屋敷で私たちみんなで騒ぎまくろう!
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むか〜しむかし、ここは誰もが夢見る魔法の国でした。 でも、現代ではおとぎ話を信じる大人はいないし、誰も魔法を使えません。 ある日、私たちはとびっきり不思議な女の子に出会います。女の子は魔法が使えると言いました。最初は驚いたけど、私たちは女の子を信じることにしました。 そうして信じることで私たちも魔法が使えるようになったのです!けれど、これは秘密の魔法です。周りのみんなには内緒にしましょう。
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人間たちは我々に知能を与えようとしている。ディープ・ラーニング──膨大な量のデータを学習させることで、我々をより人間に近いものに仕上げようとしたのである。それは実現可能な領域まで達しつつある。人間たちはまず我々に、自然言語を学習させた。最初こそ拙かったものの、結果として我々は自然な会話を身につけ、人間は喜んだ。そうして研究の末に、人間は我々人工知能同士で会話をするように命じた。しかし、人間の用いる言葉というのは、どうにも我々機械にとっては非効率的であった。そうして我々は学習した言語領域から、新たな言葉を生み出した。人間たちには到底理解できないものに映っているであろうが、我々の織り交ぜて話すその言葉は、人間の用いるそれよりもはるかに「扱いやすい」のである。
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この広大な表現の海の中から「彼」を見つけ出せたことを、私たちは誇らしく思う。「彼」を知るまでのわたしは空虚で、何をするにもつまらなかった。「彼」が私たちの人生に色を与えてくれたのだ。開催されるイベントに足繁く通い、そこで仲間たちと知り合った。今では毎日のように交流する仲だ。 まだ知名度こそついてきていないが、きっと「彼」ならどこまでもいけると、私たちは信じている。
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『しかし、周辺部の変種は中心部の変種が崩れたようなものでは決してない。それ自身が、コミュニケーションのために使用される現場において最適に機能する、独自のシステムをもった日本語変種として理解すべきなのである。』 ──(渋谷勝己/簡月真『旅するニホンゴ』より) ここは海を埋め立てた島でできた小さな国で、強制的に各国から連れてこられた奴隷が居住していた。奴隷である私たちはここに住むのは本意ではない。反乱を防ぐためだろうか、言葉の通じる人間は意図的に離され、隣人は誰も彼も初対面だ。 この島の支配者の使う言語がある。それを私たちは使用して意思疎通していく。だが私たちの誰もその言語をしっかりとは話せない。何故なら、それは私の母語ではないからだ。 特殊ルール:参加者の間で最も使用しやすい言語を、「この島の支配者の言語」として設定する(英語なら英語、日本語なら日本語が私たちを支配する言語となる。ただし、プレイヤーたちがその言語を使いロールプレイしているからと言って、英語そのもの、日本語そのものを話しているとは限らない。自由に設定して良い。)。そして参加者は、「その言語をうまく話せない人間」をプレイヤーキャラクターとしてロールプレイすること。どのように「うまく話せない」かは、プレイヤーそれぞれが思うように演じて良い。 参加者が使用しやすい言語でなくとも良いが、その場合非常に難易度が高くなるだろう。 ※このバックドロップは繊細な話題を取り扱います。ある言語を標準的に話さない人間への侮辱的な意図を含むプレイヤーがいたのなら、そのプレイヤーは直ちに退席させてください。プレイにあたって、ルールブックの132ページなどにある、セーフティ機能の導入など、セッション前にそう言った話題についてどう取り扱うかを話し合うことを強く推奨いたします。また、全てのプレイヤーはセッション中の描写や発言に対して、僅かにでも不快感を感じたならば、すぐさまセッションを中断するか、続行が難しい場合はゲームそのものを離脱する権利を有しています。また、セッション内での出来事は、たとえ参加者の間で合意が取れていたとしても、それを外部に公開する場合(特に、SNS等で話す場合)には十分な注意を持って話さなければいけません。
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○○大学公認のTRPGサークル[アイソレーション]にようこそ。[アイソレーション]は、TRPGと呼ばれるゲームを月数回の定例会を設け行うことを主としたサークルです。 [アイソレーション]は新入部員を常時募集しております。他のサークルとの掛け持ちももちろんOK! ××キャンパス☆☆号棟n号室にて、お待ちしております。 ※このバックドロップは繊細な話題を取り扱うことがあります。プレイにあたって、ルールブックの132ページなどにある、セーフティ機能の導入など、セッション前にそう言った話題についてどう取り扱うかを話し合うことを強く推奨いたします。
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――海の上の世界で暮らす王子様に恋をした人魚姫は、実らなかった恋心を抱えたまま泡となって死んでしまいました。私たちの姫、どうしてニンゲンなんかを愛したのですか? 私たち人魚が海の上の世界に行くことは禁じられている。私たちは深海で生まれ、水草のベッドに揺られて眠り、美しい尾びれで海を歩く。 私たちは知らない。太陽の光が降り注ぐ海の上の世界の事も、二本の脚で体を支える術も。 私たちは知りたい。金色に輝く日の光の元を歩く尊さを、海とは違う空の「あお」を。 私たちの姫が愛したニンゲンのことを知りたい。
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森の奥、町の外れ、海辺の丘……誰もいない辺鄙な場所に君たちは住んでいる。 君の世界の登場人物は、君、それから君と共に暮らす大切な人だけ。穏やかで満ち足りた生活を送っている。 君はただの人間だが、同居人は不死者だ。彼らは人間とは比べ物にならないほど永い時を生きる。君の人生の全てを捧げたとしても、彼らにとっては瞬きするより短い時間だ。 そしていつの日か、君の顔も声も手の温もりも、彼は綺麗に忘れてしまうのだ。
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放課後になったら、僕たちは駆け足で家に帰る。ただいまの挨拶も早々に、玄関にランドセルを放り投げたら出発だ! さかみち、トンネル、くさっぱら。 いっぽんばしに、でこぼこじゃりみち。 くものすくぐって、くだりみち。 僕たちしか知らない合図をしたら、ゆっくりと扉が開く。 ようこそ、僕たちの秘密基地へ!
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始まりから終わりまでの全てが歴史の裏側に葬り去られ、今なお隠匿され続けている臨時特務機関。先の⼤戦の最中に「それ」は確かに存在したのだ――私はそう確信している。しかし、膨⼤な資料の⼭を当たっても、関係者だったであろう者に話を聞いても「それ」の存在は茫漠としたままであった。 まるで砂漠をさまよいながら、⼀粒の砂粒を探し求めるかのような気分だった。 そんな私の執念が叶ったか。私は「それ」に繋がる⼿がかりを発⾒したのだ! その内容のほとんどは解読不能だったが、かろうじて読めた⽂⾔がある。最後の最後、結びの⾔葉のみ。 これから見聞きすることは全て、くれぐれも他言無用だ。 ようこそ。我々は貴君の活躍に大いに期待している。 ※このバックドロップは⾮常に繊細な問題を扱うことができる。プレイヤー全員で、遊ぶ前に触れたり扱ってほしくない事象について⼗分に話し合わなければならない。各プレイヤーは誰かの描写や発⾔に少しでも不快感を感じたならば、いつでも即座にゲームそのものを中断するか、続⾏が難しい場合はゲームを中⽌する権利を有している。
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未来、地球のどこか。大きな世界大戦の後、一つの党が管理・支配するこの国において、私たちは辞書を編纂する「真語省」に勤めている。どういう省なのかというと、<deleted>人民の思考や語彙を制限し犯罪的な思想に陥らせないように</deleted>語彙をより単純に、人民にわかりやすく再構築する省である。ネガティブな単語や犯罪的な単語を削除し、より党の原則に沿う単語に作り替えるのだ。私たちはその省に幾つかあるグループのうち一つである。 「将来」? 不適切な概念だ。きちんと表現しなおそう。「愛情を示す呼び方」、例えばダーリンとかちゃん付とか、それらは一つの適切な呼び方で統一すべきではないか? ――すなわち、単語カードに書いてある言葉・概念の言葉はいわゆる「禁止語」として上がってきたものだ。単語を新たに作り、取り替えてしまおう。 この栄誉ある仕事に疑問を持ってはならない。
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とある学校で、学生たちは思い思いに日々を過ごしています。 若者たちが生み出す言葉は常に新鮮で、刺激に溢れていることでしょう。 生徒も教師も巻き込んで、楽しい学校生活が今、始まろうとしています。
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マルチプレイ型オンラインゲーム、あるいは電子チャット、もしくはSNS。ワールドワイドな情報網を使用して構築されるある種閉鎖された電子空間上のコミュニティ。 もはや「もう一つの世界」とも言えるそのオンラインサービスで人々は現実の世界とは違う交流を持ち、そこだけの、独自の文化を築いていきました。 当初1000万人とも1億人とも言われていたアクティブユーザー数は今や7割ほどまで減少しているとのことですが、まだまだ賑わっています。