説明 我らはこの山の長である。我らには熊のような体躯も、鷲のような翼もない。決して強い生き物とは呼べないだろう。しかし我らがたった十数匹でこの山のケモノたちの上に立っているのは、よくはたらく知恵と変化の術のおかげである。おかげで山のふもとの人里に下りることだってできる。

それにしても近頃のニンゲンの里はなにやら不思議なものにあふれている。道には明かりのつく木が生えているし、家では音の鳴る箱に耳をかたむけている。とはいえ暮らしが大きく変わったわけではないようだ。我らの暮らしもそう変わることはないだろう。