説明 アイがそう仰るから

NWOの模範市民であるのは時には険しいことだ。夜明けとともに起床して(あるいは、少なくとも時計が夜明けだと告げたとき。永久にエンドウ豆スープみたいな空はなんの指標にもならない。)、仕事をしたり、終日バーチャル事務処理をしたり、”アイ”の毎日の放送のために家に戻ったり、最後にはベッドに入って、また翌日にそれを全て繰り返すということはそう難しいものではないかもしれない。精神の麻痺と魂の摩耗が自殺傾向に繋がることは確かだが、必ずしも難しいことではない。困難であるのは、他の15億人の市民と同じような平凡な生活を送る一方で、暗闇の中のささやきを無視して、隣人の叛意や受付ロボットの裏で灯る魂、または公文書にある記述への驚きを隠そうとすることだ。

しかし、最終的には治療され、普通の生活を送ることができるようになるだろう。なぜなら、君はシャロンリハビリテーション研究クリニックに送られたからだ。義務的なグループセラピーセッションが4週間続くことで、もはや不安と、そしてより重要なことに、反体制的なビジョンを失ってまた平凡な生活に戻れることだろう。

できすぎた話に聞こえるか? この件に関して選択肢はないが、治療はタダだ。ただ、「アイ社会適性調査」の期限内に完全に回復の兆候を見せていない人間は、無料サービスの終了措置も含まれている(ただし火葬費用は別々なので、何とか工面しなければならないが)。まあ、君の「ビジョン」が悪化してさえいなければいいのだが。診療所のスタッフも影響を受けているようにも見えるし、長く滞在すればするほど元の平凡な生活に戻れる可能性は薄くなるだろう。だが、外に出ることは中にいることよりも難しく、もはや君を監視しているものはそこらで見るようなビジョンだけではないのだ。

本当に狂気に陥ったのか? それは正気をどのように定義するかというだけの問題だよ。